研究プロジェクト詳細 2.転写因子 ATF-2

 cAMP は細胞内セカンドメセンジャーとして、細胞外からのシグナルを核内に伝えるのに重要な役割を果 たしています。動物細胞においては種々のホルモンなどの作用により、細胞内の cAMP 濃度が上昇すると一群の遺伝子の発現が誘導されます。1988年に、これらの遺伝子の転写 制御領域には回転対称な共通DNA配列 TGACGTCAが見い出され、CRE(cAMP response element)と名付けられました。この配列は cAMP 濃度の上昇に応答して転写 を誘導するだけでなく、構成的な転写の上昇も引き起こすことから、複数種の転写 因子がこの配列に結合することが予想されました。そして1988〜1989年にかけて、複数種のCRE 結合因子の cDNA がクローニングされました。CREB(CRE-binidng protein)が最初に、そしてそれに引き続いて私達が CRE-BP1(CRE-binindg protein 1)をクローニングしました。一方、アデノウイルスの持つがん遺伝子産物 E1A による転写活性化を研究していたグループはCRE を介して E1A が転写 を活性化することを見い出し、一群の CRE 結合蛋白質の cDNA をクローニングし、ATF(activating transcription factor)1〜6と名付けました。このうち ATF-2 はCRE-BP1 と同一であり、現在ではATF-2の名前が一般的に用いられています。その後、これらの転写 因子と類似の構造を有し、CRE に結合する転写因子が多数同定され、これらの一群のCRE 結合因子を現在では、CREB/ATF ファミリーと総称しています。

 CREB/ATF familyのメンバーはすべてC端側領域に塩基性アミノ酸クラスターとロイシンジッパー領域から成るb-ZIP(basic leucine zipper)構造を有し、この領域を介してホモダイマー或いはヘテロダイマーを形成し、二量 体としてCRE に結合します。多数のメンバーのうち、CREBとATF-2についての研究が最も良く進んでいます。ATF-2 はJunともヘテロダイマーを形成し、JNK(Jun amino-terminal kinase)やp38などのSAPK(stress-activated protein kinase)によってリン酸化される領域とメタルフィンガー構造の2つのサブドメインから成る転写 活性化ドメインを有することが分かっています。
 炎症性サイトカイン(TNFα, IL-1β等)やストレス(UV、γ線照射、熱ショック、高浸透圧等)によりSAPKが活性化されると、ATF-2が直接リン酸化され、活性化されます(図1)。最近の私達の研究により、TGF-β刺激により活性化されたp38が ATF-2をリン酸化し、同時にSmad3/4がATF-2に結合することが示され、TGF-βシグナル伝達経路でATF-2が機能していることが分かってきました。ATF-2はSAPKで活性化されることから、細胞のストレス応答、例えば細胞増殖停止やアポトーシスに関与することが示唆されているが、詳細は不明です。ATF-2部分欠損マウスは骨形成の異常やプルキンエ細胞数の低下が見られ、一方私達は最近、ATF-2完全欠損マウスは胎便吸引症候群と類似の症状を示し、出生直後に死亡することを明らかにしました(図2)。現在、分子生物学的手法、マウスの発生工学的手法、及びショウジョウバエの遺伝学的手法を用いて、種々の角度からATF-2の機能を解析しています。

 

図1

<図1>

図2
<図2>



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