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(独)理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター

生きる仕組み:研究を支える役割
(常陽新聞連載「ふしぎを追って」)

 

私たち自身「生きもの」ですが、私たちが食べ物から栄養を取り、それを使って運動したり、ものを考えたりするということだけを見ても、その「生きる仕組み」が複雑であり、しかもよくできていることがわかります。

この仕組みが正しく働かないと病気になりますが、医学が進歩した今日でも治すことのできない病気が残っているのは、この仕組みが大変複雑であることを示しています。ヒトの病気を研究し、治す方法を見つけ出すことは社会にとって非常に大切ですが、このような研究をするために、「ヒト」そのものを材料にすることはできません。

そこで、ヒトと同じ哺乳動物であるマウスをモデルとして「ヒト」の「生きる仕組み」と「病気」の研究を進めなければなりません。現在日本を含め世界中の研究者が、さまざまな種類のモデルマウスを使って、この「生きる仕組み」を研究していますが、そのためにはたくさんの種類のモデルマウスが必要です。

理研筑波研究所のバイオリソースセンターは、そのようなマウスを集めて保存し、それらがモデルとして正しい性質を持っていることを確かめた上で研究者に配るという仕事を、2001年にはじめました。現在では5000系統のマウスを持ち、その多さでその数量の多さで世界32番目のセンターになっています(図)。

ヒトだけではなく、あらゆる動物、植物、および微生物は互いに関係を持ちながら地球上の「生きもの」の社会を形作っています。それらの「生きる仕組み」は複雑であり、どれも研究の対象となります。しかし、実際にすべての「生きもの」を使って「生きる仕組み」を研究することはできないので、ここでもモデルが必要です。今日、マウスだけでなく、いろいろな動物・植物・微生物が研究のために世界中で使われており、バイオリソースと呼ばれています。

理研バイオリソースセンターではマウスのほか、次のようにいくつものバイオリソースを整え、リソースごとに専門の部門が担当して、国内外の研究者を支援しています。

当センターには、これら支援の部門とともに、「生きる仕組み」を研究して、われわれが維持・保存・提供しているリソースに独自の研究用資源としての価値を与えようという六つの部門が活動しています。その中には、遺伝子の変異を持つマウスの病気を診断しようという、マウスクリニック部門もあります。

「生きる仕組み」が複雑なのは、「生きもの」の一つの性質を現すのにも複数の遺伝子が関係していることによると思われます。さらに一つ一つの遺伝子には、進化の長い歴史が影を落としています。

このように複雑な「生きもの」を相手にその「生きる仕組み」を研究するには、きわめて品質の高いリソースをモデルとして使わねばなりません。そのようなバイオリソースを用意する私たちの役目は、今後ますます大きくなることでしょう。

(特別顧問 森脇和郎)
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