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(独)理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター

実験植物 4:植物培養細胞とは
(常陽新聞連載「ふしぎを追って」)

 

まず、写真を見てください。フラスコの中に見えるものは何でしょうか?これは植物細胞のかたまりで、植物培養細胞といいます。

植物はたくさんの細胞からできています。葉や根の一部を切り取って植物ホルモンや栄養分の入ったかんてん培地の上に置いておくと、その中の細胞が増殖をはじめます。やがて葉や根のような植物の形を失い、無限に増えつづける細胞のかたまり、培養細胞になります。この培養細胞は植物の形をしていませんが、普通の植物と同じように生命活動をしています。

植物培養細胞には、研究に適した特徴があります。まず、培養細胞は普通の植物体よりも速く増えます。次に、植物体は葉や根のようにいろいろな種類の細胞からできているのに対し、培養細胞は同じ性質を持つ均質な細胞からできています。さらに、フラスコなど容器の中で育てているので、簡単に生育条件を整えることができます。これらの長所を持つ培養細胞は基礎研究から応用研究まで幅広く利用されています。

例えば、植物培養細胞を用いて物質生産を目指した研究が行われています。植物は薬や香料・色素・樹脂などとして役に立つ多くの物質を作ります。しかし、普通の植物体では有用物質を作る組織が限られていたり、量が少なかったりします。そこで、増殖が速く均質な培養細胞の特徴を生かして、有用物質を大量生産する研究が進められてきました。

バイオリソースセンターにも赤い色素を作るブドウやヨウシュヤマゴボウの培養細胞があります。これらは日本の研究者が長年研究を積み重ねて苦労して作りあげた貴重なバイオリソースです。

私たちはモデル植物シロイヌナズナの培養細胞をはじめ、いろいろな植物の培養細胞を保存しています。しかし、種子のように何もせずに保存しておくことができないため、その維持はとても大変です。培養細胞はかんてん培地上で維持していますが、どんどん増えつづけますので、定期的に培養細胞の一部分を切り取って新しい培地に植えかえる作業が必要です。

そこで、私達は培養細胞を凍結して保存する技術開発を行っています。この技術を完成させて、大切な植物培養細胞を安全に保存し、植物科学研究の推進に貢献することがバイオリソースセンターの役割なのです。

写真)ヨウシュヤマゴボウの植物培養細胞。赤い色素を作る。三角フラスコ中のかんてん培地の上で育っている

(実験植物開発室 小林俊弘)

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