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(独)理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター

実験植物 3:シロイヌナズナの成果を白菜に
(常陽新聞連載「ふしぎを追って」)

 

観測史上初という文字が踊った猛暑の夏も過ぎ、朝晩の冷え込みを感じるようになりました。スーパーでは冬野菜の代表格である白菜が目を引く季節です。茨城県は白菜産地として知られ、その生産高は長野県と日本一を争っています。

皆さんは白菜がどのようにして誕生したのかご存じでしょうか?また、日本人はいつごろから白菜を食べ始めたのかご存じですか?白菜はカブとチンゲンザイを交雑することで誕生したと考えられています。そして意外なことですが、白菜は明治以降に中国から日本に入ってきたようです。当初、日本での白菜栽培は困難を極めましたが、茨城県では安定した栽培に向けた試みが積極的になされ、白菜産地としての地位を確立してきました。

このように茨城と縁の深い白菜ですが、植物研究の分野では現在、世界的に注目が高まっており、日本を含む世界各国で協調して進めていた白菜のゲノム配列決定プロジェクトも終了間近です。なぜ今、白菜なのでしょうか?

実は白菜がアブラナ科作物であることと深く関連しています。現在、もっとも研究が進んでいる植物はアブラナ科の雑草であるシロイヌナズナです。これまでにシロイヌナズナでは、花の形成、葉の形、病原菌や害虫に対する抵抗性、さまざまな環境変化に対する適応力を調節しているなど、数多くの遺伝子が明らかになっています。また、これら遺伝子の機能を利用することで、病害虫抵抗性を強化したり、環境変化に対する適応力を強くしたりできるようになっています。

シロイヌナズナで可能となったこれらの技術を、実際に食べることができる農作物に役立てようという試みが現在、世界的に始まっています。その際にシロイヌナズナと近縁な白菜が、格好の材料と考えられているわけです。

当センターではこのような状況を予想して、これまでに数多くの有用な白菜遺伝子を取得し、その塩基配列を決定してきました。また、これら遺伝子はどのような状況で働いているのか調べています。これまでに整備した白菜遺伝子や、その情報は、これから本格的に植物研究者に提供を開始する予定で、期待が高まっています。

シロイヌナズナで得られた知見が白菜で実を結び、「栽培しやすい」「病害虫に強い」「健康に良い」などのスーパー白菜が登場する日も、そう遠くないかもしれません。

図)シロイヌナズナで見いだした成果が農作物の改良に役立てられ始めています

(実験植物開発室 安部 洋)

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