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(独)理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター

実験植物 1:実験室に最適、シロイヌナズナ
(常陽新聞連載「ふしぎを追って」)

皆様はシロイヌナズナという植物をご存知でしょうか?

シロイヌナズナはアブラナ科植物の仲間でユーラシア大陸に広く自生していますが、産業的な価値がない雑草です。ところが発芽直後は数ミリ程度しかないこの小さな植物が、最先端の研究では今やスーパーモデル並みの活躍をしています。これからの4回は、シロイヌナズナを中心に植物の話題を紹介したいと思います。

植物は人間の生存に欠かせない食料や酸素、材木や医薬品を供給する重要なパートナーです。でもシロイヌナズナは食料にも有用物質の生産にも向いていません。それではなぜこの植物が研究に使われるのでしょうか?その理由はシロイヌナズナの体そのものにあります。

植物のゲノムや遺伝子の働きを研究するには、実験材料となる植物を環境の整った室内で育てる必要があります。この植物の小さな体は、まさに実験室向きと言えましょう。サイズに加え、研究社会で標準の株として使われているシロイヌナズナは蛍光灯の下でも育ち3カ月程度で種子が実るなど、室内で取り扱う上で多くの利点を持っています。

しかしいくら使いやすいとはいえ、どうしてこれを選ぶのかまだ納得いかない方もいらっしゃると思います。実際には、作物などの実用植物を使いたい研究者も数多くいます。私自身もかつてイネを使った研究を進めていましたが、途中から材料をシロイヌナズナに変えています。

その理由は、研究に役立つ多種多様なリソース(実験材料)と豊富な技術、情報がシロイヌナズナにはそろっているためです。有用な植物はイネ以外にも限りなく存在します。そのすべてについてリソースや情報をあらかじめそろえておくことは不可能です。そこで研究者たちは扱いやすいシロイヌナズナを植物の代表(モデル)として選び、リソース、情報を網羅的に整備するとともに、さまざまな解析技術も開発してきました。

ちなみにシロイヌナズナは体のサイズだけでなくゲノムの大きさも際立って小さかったため、高等植物の中で最初に全ゲノムの解読が終了しています。

バイオリソースセンターでは、このシロイヌナズナのリソースや情報を研究者に提供する仕事をしています。

それではシロイヌナズナのリソースや情報を土台としてどのような研究が進められているか、次回以降にその例をご紹介したいと思います。

 

図)さまざまな研究に利用されているシロイヌナズナ

(実験植物開発室 小林正智)

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