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(独)理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター

研究用のマウスとは 3:感染症から守る
(常陽新聞連載「ふしぎを追って」)

 

マウスを研究のために飼育していく上で注意を払わなければならないことに、感染症対策があります。

もし細菌やウィルスによる感染症にかかったマウスを知らずに研究に利用してしまうと、研究結果が、実験の作用によるものか、感染の影響によるものかわからなくなり、間違った結論を出す恐れがあります。

また、マウスの系統の種類によっては免疫力が低く、細菌やウィルスに感染しやすいものもいますので、そのようなマウスが感染症にかかると死んでしまうこともあります。こうなると、研究自体もストップしてしまいますので、その被害は甚大です。

病気を引き起こす細菌やウィルスにマウスが感染していないかを確認する方法としては、主に二つの検査があります。1つ目は外部からマウスを導入する時の、入口での検査です。この時が一番、細菌やウィルスが持ち込まれる危険性が高くなります。そこで、まず入口で検査をして、感染の有無を確認します。空港で、国内に感染症を持ち込ませないようにしている検疫検査と同じで、いわば門番としての役割を果たしています。

一方、感染のないきれいなマウスを飼育室で飼っていても、モノやヒトなどから細菌やウィルスが持ち込まれる恐れがあります。そこで二つ目の検査として、すでに飼育室にいるマウスが感染症にかかっていないかを定期的に確認する検査を行います。広く利用されている方法としては、マウスの飼育ケージを収容している棚ごとに、囮(おとり)マウスと呼ばれる検査用のマウスを用意する方法があります。飼育ケージの床敷の交換の時に、使用済みの床敷を少量、囮マウスが入った飼育ケージに入れることで、飼育棚全体のマウスを囮マウスに間接的に接触させます。こうすることで、もし飼育中のマウスに感染症にかかったものがいれば、その飼育棚の囮マウスの検査で検出することができるのです。

また、マウスを細菌やウィルスの感染から守るためには、飼育室にもそれなりの工夫が必要です。私たちのセンターではマウスを感染のないきれいな状態で飼育するために、マウスの生活や繁殖に適した温度湿度条件になっているだけでなく、高性能フィルターでろ過したきれいな空気が供給され、外部から汚れた空気が流れ込まないような仕組みになっています。中に入れる飼育ケージや餌も、全て滅菌されたものを使用し、飼育室で作業する人も半導体工場や食品工場で働く人のように、シャワーを浴び、滅菌した作業服を着て中に入ります。

飼育室内では常にマウスの健康状態に気を配り、きれいな状態で飼育できるよう環境維持に努めています。

図1:病気の有無をチェックする診断キット。特定の細菌やウィルスに感染していると変色する。

図2:マウス飼育室での作業の様子。作業者は滅菌された作業服を着用して作業を行う。前面に色付きのカードが付いているのが飼育ケージ。

(実験動物開発室 目加田和之)

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