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(独)理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター

研究用のマウスとは 2:どんなマウスがいるの?
(常陽新聞連載「ふしぎを追って」)

 

私たちの遺伝子の働きや病気の治療法の研究に必要なマウスは、日々の研究現場で進化を続けています。人類が100年かけて育成してきた近交系マウスが近年、遺伝子組換え技術と出会い新しい遺伝子操作マウスが多数誕生しています。

理化学研究所バイオリソースセンター(BRC)が2001年に設立されて以来、我が国の重要なバイオリソースとして4700系統のマウスを収集・保存しており保有数は世界第2位です。これらの系統の70%近くは遺伝子操作によって生み出されたトランスジェニックとノックアウトマウスです。日本の研究者が長年努力して育成してきた近交系マウスやヒト疾患モデルとなるミュータント系も大切に保存されています。

トランスジェニックマウスは外来の遺伝子を受精卵に注入して作製します。BRCのトランスジェニックマウスの中でも最も多くの研究者に利用されているのはオワンクラゲの蛍光蛋白(GFP)遺伝子を全身で発現するグリーンマウスです。このマウスは大阪大学の岡部勝教授の開発したものですが、導入したGFP遺伝子に関しては米国の下村脩博士がその発光機構の解明で2008年のノーベル化学賞を受賞しています。BRCには特定の細胞が蛍光を発する200系統以上のマウスが保存され、解像度の高い蛍光顕微鏡と組み合わせてこれまで見ることのできなかった生命現象が解明されています。

ノックアウトマウスはもともとマウスが持っている特定の遺伝子の働きを失わせる方法です。こうすればマウスに病気や異常が現れてその遺伝子の役割が解明できるというアイデアです。ノックアウトマウスの作製にはES細胞(胚性幹細胞)の樹立と遺伝子ターゲティング法の確立が必要でした。2007年のノーベル医学・生理学賞はこのノックアウトマウスの作製法の確立に貢献したエバンス、カペッキ、スミシーズの3人の研究者が受賞しています。

バイオリソース(生物遺伝資源)とは医学・生物学、農学などの研究に必要な研究材料のことを指しますが、このバイオリソースは私たちの将来の研究と産業を発展させるために不可欠です。いちど作られた研究材料を大切に保存できれば未来の研究開発の種となり新しい発見や発明につながります。

天然資源の少ない日本にとって研究者の知的活動により生み出されたマウス系統も我が国の貴重な資源であり、国の資産です。生き物であるバイオリソースは一度絶えたら復元できないものとして特に大切な保存が求められています。

理研BRCの収集系統の種類

(実験動物開発室 吉木淳)

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