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(独)理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター

リソースとゲノム 3:遺伝子の発見はバイオリソースが鍵!?
(常陽新聞連載「ふしぎを追って」)

ヒトゲノムには全遺伝子がDNA分子として記載されています。
 DNAは、細胞核のなかの染色体に折りたたまれて入っています。受精卵は、両親から23本ずつ合計46本の染色体としてゲノムを受け継ぎます。細胞分裂を繰り返して大人になると細胞の数は60兆にもなります。そのすべての細胞が同じ染色体DNA46本を受け継ぎます。卵と精子だけが例外的に1セット23本の染色体を持っています。
 ABO式血液型の遺伝子は、第9染色体の端にあります。この決まった場所を「遺伝子座」と呼びます。「ゲノム計画からヒトは3万弱の遺伝子を持っていることがわかった」というのは遺伝子座の数のことです。
 ABO式血液型遺伝子座にはAかBかOの「対立遺伝子」のどれかが入っています。このように、ある遺伝子座に違った対立遺伝子が存在することを「多型(たけい)」がある、といいます。多型によって種内でも個体どうしの違い「個性」が生じます。ふたご(一卵性双生児)がそっくりなのは、多型がまったくないからなのです。

  さて、遺伝そのものは有史以前からよく知られ「育種」に利用されてきました。イヌの品種や米 や麦の改良は、遺伝交配を重ねて得られてきました。何万年以上も遺伝を利用しながらメンデルの法則が発見されたのは1865年でした。しかも認められたのは1900年でした。
 遺伝の本質を明らかにしたメンデルの常識破りの発見には、バイオリソースの整備開発と維持が不可欠でした。メンデルはまず「純系」というリソースを確立しました。BBやbbといった同じ対立遺伝子をもつ系統です。しかし、これだけではメンデルは法則を発見できませんでした。

 図にエンドウマメの高さが3対1に分離した例を示していますが、高いものどうしや低いものどうしでも少しずつ高さが違います。この微妙な違いは、栄養や日光などの環境要因に加え、高さを司るもっとたくさんの遺伝子座の複雑な組み合わせによって決まっています。
 メンデルの「高さの遺伝子座」は、実はそのひとつにすぎません。ただし、たくさんのほかの遺伝子座の多型がどのような組み合わせになっても、メンデルが発見した遺伝子座の多型が突出した違いをもたらすため、メンデルは遺伝の法則を発見できたのです。

図 両親からもらったゲノム2セットはほぼ同じDNA配列を持つ。ということは微妙に違う個所もあり、それが「多型」である。多型は何百万カ所もあり全く同じ組み合わせをもつのは一卵性双生児だけである。

分析機器と農薬の標準品(写真)

( 新規変異マウス研究開発チーム 権藤洋一)

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