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(独)理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター

凍結・融解:命を復活させる技術
(常陽新聞連載「ふしぎを追って」)

 

年末に家の冷凍庫を大掃除していたところ、いつのものかわからない化石のようになった牛肉を見つけました。たいていの食品には賞味期限や消費期限があります。肉や魚などであれば冷蔵で数週間、冷凍でも数カ月が「食品」としての限界でしょう。当然、その「化石」は食べることをあきらめざるを得ませんでした。

理研バイオリソースセンター(BRC)ではさまざまな生物資源を収集・保存・提供していますが、そのすべてを生きたまま保存しようとすれば、維持にかかる場所や費用は膨大なものとなります。そのため、例えばマウスであれば一部は精子や卵子、および受精卵としてマイナス196度の液体窒素で凍結させることにより、貴重な「種」を効率的かつ半永久的に保存することが可能となります。

マイナス196度で凍らせた精子や卵子も融解して受精させれば、新しい命として誕生してくるわけですが、正常な命としてより効果的に復活させるためには、その凍結・融解技術をさらに高める必要があります。

家庭用冷凍庫で凍らせた食品の消費期限がせいぜい数カ月程度だとすれば、同様に家庭用冷凍庫で凍らせたマウスを新しい命として復活させるための期限は、どのくらいなのでしょうか?

これまでに私たちは、15年間も家庭用冷凍庫と同じ温度(マイナス20度)で凍らせたままだったマウスから採取した精子を、卵子に注入(顕微授精)して子供を得ることに成功しています(写真)。

しかし、そもそも精子や卵子ができないようなマウスだったとしたら、そこからどのようにして命をつむげば良いのでしょうか?その場合、クローン技術を用いればその命を復活させることができます。精子や卵子ができないマウスの皮膚細胞(体細胞)から核だけを取り出し、あらかじめ核を除いた正常なマウスの卵子に皮膚細胞から取り出した核を入れて刺激を与えれば、もともと皮膚としての記憶に従っていた核が受精卵としての記憶を思い出し、新しい命として復活するのです。

このように命をつなぐ技術を極め続けていくことにより、どのような状態の生物資源(バイオリソース)からでも、そこから命として復活させて種を維持することが可能となります。もしかしたら将来、永久凍土で凍っているマンモスの命も復活させることができるようになるかもしれません。


図)15年間凍っていた体から採取した精子で復活したマウス

(遺伝工学基盤技術室 本多 新)

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