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(独)理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター

細胞リソース 4:輸血に使える赤血球をつくる
(常陽新聞連載「ふしぎを追って」)

 

ケガ、手術などでの大量出血や病気の治療のために輸血という方法があるのはみなさんよく知っていると思います。

輸血で使われる血液は健康な人の善意による献血によって集められています。今のところすぐに輸血用の血液が足りなくなるということは無いようですが、最近は献血をする人の数が減ってきているそうです。これから先、少子高齢化が進むにつれ、このまま献血をする人が減ってしまうと、将来輸血に使える血液が足りなくなることが心配されています。

また、献血をする時にはエイズや肝炎など血液から感染する病気の検査をしますが、感染したばかりの人は検査をしても発見できなかったり、今までに知られていない病気は見つけられないという問題があります。このような問題を解決できる可能性が「万能細胞」には秘められているのです。

万能細胞は体のどんな部分の細胞にもなることができる細胞であることは前回紹介しましたが、私たちは万能細胞から輸血に必要な赤血球の“素”になる細胞をつくる研究をしています。万能細胞から赤血球をつくるにはある特定のタンパク質を万能細胞に加えて培養することで、つくることができます。

しかしながら赤血球だけをつくることは難しく、白血球など他の血液細胞も同時にできてしまいます。白血球は輸血したときに拒絶・炎症などを起こす原因になるので無いほうがいいのです。また、できた赤血球は増やすことができないので、常に万能細胞からつくり続けなければなりません。これでは大量につくるためには時間と労力に加えお金もかかりすぎます。

そこで、私たちは赤血球にしかならない赤血球の“素”になる細胞(赤血球前駆細胞)をマウスの胚性幹細胞(ES細胞)からつくりました。この細胞は万能細胞のように増えることができるのですが、万能細胞とは違って赤血球だけをつくり出すことができます。

また万能細胞から赤血球をつくるには2週間程度かかりますが、この赤血球前駆細胞からは3?4日でつくることができます。つまり赤血球前駆細胞を使えば、1)赤血球のみを、2)短期間で、3)大量につくることが可能になるのです。

現在、私たちはヒト万能細胞から赤血球前駆細胞をつくるために研究を進めています。将来、献血に頼らない輸血医療の確立を目指して!

でも、みなさん、献血へのご協力はお忘れなく・・・。

 

写真)赤血球前駆細胞

 

写真) 赤血球へ変化後

(細胞材料開発室 寛山 隆)

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